抄録
第5期科学技術基本計画では,多様な人材を育成・強化,協働させることによって,日本がよりイノベーティブな成果をあげることが求められている.これを受けて,例えば国立研究開発法人を「イノベーションハブ」として人材を糾合する場を作り,イノベーションを駆動する基盤として整備しようとする取り組みが進められている.
このような多様性の導入によるイノベーションの発現には組織マネジメントがより重要となる.しかし,この点について,研究開発の現場ではあまり議論がなされていないようである.行動科学及びダイバーシティマネジメントの視点から,人材糾合された組織がその課題を克服し,より成果をもたらすための方策として以下の事項について調査検証されることを提案したい.
1)多様性組織の目的が,言語化され,糾合される個人に明示されているか
2)個人の貢献に対する処遇を公平・公正に行う「フェア」と,糾合された個人が組織内で少数派であることで生じる特有の事情に配慮する「ケア」の双方が充たされているか
3)少数派の昇進・昇格を無意識のうちに阻む見えない壁「グラス・シーリング」の存在がないか