2021 年 17 巻 1 号 p. 1_29-1_41
企業と大学における組織的な大型共同研究は長期的な増加傾向にあるが,両者の関係構築には組織文化や社会的使命の違いなどに関する多くの阻害要因が存在する.これらは,共同研究の成否にも影響を及ぼすが,阻害要因を克服し共同研究の成果を得るためには,適切な組織間関係の構築・維持が不可欠である.産学連携に関する先行研究では,対話・理解・信頼からなる一連の関係構築プロセスが良好な関係やパフォーマンス向上に大きな役割を果たすことが指摘されているが,共同研究事例において検討されることは少なかった.産学連携の実務経験者15名に対するインタビュー調査データを,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析したところ,企業と大学において組織的共同研究を進める上で,①組織階層を考慮した関係構築プロセス,②相手を尊重した不確実性への対処,③社会的視点からの成果評価が重要になることが明らかになった.