抄録
1990年代半ば以降,大学と企業との共同研究数は急速に増加した.これらの活動から創出された発明は,大学と企業が共有して権利化することが一般的となっており,2007年には大学発の国内特許出願の約半数が企業との共有となっている.本稿では,特許の共有を規定する特許法第73条の考え方を再確認し,大学と企業が特許を共有することに際し,どのような問題が発生しているのかを整理する.さらに,海外の事例として,米国や英国等で同問題がどのように回避されているのかを検討する.その上で,大学やTLOはできるだけ権利の共有化を避け単独で所有すること,およびそのことを推奨する統一的なガイドラインの策定を提案する.