抄録
本研究では,油分が活発に分解されているコンポスト化の過程で働く油分解菌を単離することを目的とし,油分としてラードを添加したコンポスト化を行った。PCR-DGGE法を用いて微生物叢の変化を測定した結果,油分が良好に分解されているときに特徴的な微生物としてGeobacillus pallidusに由来するバンドの存在を確認した。引き続いてこのバンドに対応する微生物としてコンポスト中よりG. pallidus L33-1株を単離した。L33-1株の油分解能を確かめるために,ラードを含む滅菌原料にL33-1株を接種してコンポスト化したところ,pHは5.8付近まで急速に低下し,炭酸ガスの発生も著しく少なくなって,ラードもラード以外のコンポスト原料もまったく分解されなくなることがわかった。このため,滅菌原料にL33-1株を接種した後,アンモニアガスを通気するとともに水酸化カルシウムを適宜加えてpHの低下を抑制したところ,コンポスト化は良好に進行した。また,ラードも活発に分解されて,ソクスレー抽出装置で測定した重量基準のラード分解率はコンポスト化10日で92%に達することが確かめられ,L33-1株によるラード分解にはpHの維持が必要であることがわかった。