廃棄物資源循環学会論文誌
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論文 若手研究者特集 2023
  • 八景 勇樹, 樋口 良之
    2024 年 35 巻 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,一般廃棄物焼却施設,とりわけストーカ方式による焼却のごみピットを対象に,中長期にわたるクレーン作業による均質化の効果を検証した。均質化は,ピットでのごみの撹拌,あるいはばら撒きによって行われ,炉内燃焼を安定させる重要な要因である。燃焼の安定は,発電のための主蒸気流量の安定や保守保全コストの抑制等に寄与する。この均質化について,一般廃棄物焼却施設の実機での中長期の検証はさまざまな理由で困難であるため,実機に代えて離散系システムシミュレーションにより検証した。撹拌とばら撒きそれぞれについて 31 日間を再現し観察した。その結果,ばら撒きは,撹拌に比べて,基準発熱量に近い値となるよう均質化したごみを炉へ投入できていることがわかった。一方で,クレーンの作業量を比較すると,ばら撒きは攪拌に比べて均質化や高低差解消の移送それぞれの作業が多く,クレーンの稼働率を高めることが明らかになった。
  • 板橋 千明, 野津 喬
    2024 年 35 巻 p. 9-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋プラスチック問題等に端を発し,2010 年代半ばからプラスチックの資源循環は新たな局面を迎え各国・地域で対応が進められている。本稿では同じく非 EU の先進国であるイギリスと日本の対応を EPR (拡大生産者責任) の視点から比較し,差異の実態とその意味を考察した。研究方法としては,両国の新政策による変化を,物理的,金銭的,情報的の 3 つの側面に分類し,さらにそれぞれを収集,循環利用・適正処理,製品設計,制度構築の 4 つのステージごとに分析した。その結果,両者には明瞭な差が認められた。イギリスが物理的,金銭的,情報的各側面での政策手段の組み合わせで生産者責任の強化を図っているのに対し,日本では金銭的な手法は採用されず,自主的取組に重点が置かれており,生産物連鎖中の各主体 (生産,流通・販売,利用,リサイクル) が連携して各々実行すべき役割を果たすことが目指されている。今後,政策効果の実証と両者の差の原因の考察が必要である。
  • ―― 機能性ごみ箱による回収量モニタリングと人流データを活用した検討 ――
    和田 万里奈, 経沢 正邦, 杉山 浩平, 高橋 史武
    2024 年 35 巻 p. 83-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/27
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では機能性ごみ箱(SmaGO® (株) フォーステック)を都道423号線(表参道)沿いの13カ所に設置し,2022年7月の30日間におけるペットボトル・缶および可燃ごみの回収量を調査した。同区間での人流データ(KDDI Location analyzer®)を用い,1人あたりの回収量(以下,廃棄物回収量とする)を求めた。廃棄物回収量は対数正規分布に従い,天気や気温,曜日によって統計的有意な影響を受けていた。ごみ箱までの距離を変数とする対数正規型の回収量予測モデルは実測データ(廃棄物回収量)を再現できなかった反面,距離を対数化し,天気,気温および曜日の影響も線形的に加味した認知的距離を用いたところ,ペットボトル・缶の実測データを精度よく再現できた。一方,可燃ごみは修正モデルでも再現できておらず,ごみの廃棄(ごみ箱への投入)における心理的メカニズムが大きく異なることを強く示唆している。
  • 熊丸 博隆
    2024 年 35 巻 p. 107-113
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は2012年7月より実施されている秋田市の一般廃棄物に対する家庭ごみ有料化政策の影響を検証している。ごみ有料化政策導入により1人あたり家庭ごみ排出量は,およそ35 kg削減されたことがSDID(Synthetic Difference-in-differences)による結果のみで確認された。これはおよそ12.4 %の削減率に匹敵し,秋田市の家庭ごみ有料化政策の有効性が示唆された。さらに,この政策の実施により,秋田市においてごみ手数料1円あたり家庭ごみがおよそ4.3 g排出削減されたことも示された。
論文
  • 寺嶋 有史, 辰市 祐久, 小泉 裕靖
    2024 年 35 巻 p. 24-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    「水銀に関する水俣条約」の発効に伴い,水銀排出施設から大気への水銀排出抑制が今まで以上に求められている。ガス状水銀に対する活性炭の吸着効果を検討するために,バグフィルタの集じんろ過を模しつつ,活性炭吸着層前後の水銀濃度を連続的に測定する実験室レベルの「ガス状水銀と共存ガスの吸着・反応実験装置」を作製した。その装置を用いて各種水銀除去用添着活性炭(粒状)を評価した結果,塩化物を添着した活性炭は水銀除去効果とともに,バグフィルタ稼働温度においても安定して効果的であった。また,排ガス中の共存ガス(3種)存在下におけるガス状水銀の吸着では,塩化水素が他の成分(二酸化硫黄,水蒸気)に比べて顕著な影響を与えた。都市ごみ焼却施設で吹込使用される粉末活性炭において,6種の添着炭を調製・評価した結果,塩化水素添着活性炭が他の使用実績のある活性炭と比較して,最も効果的であることをみいだした。
  • ――余剰汚泥のオゾン前処理の影響に着目して――
    小松 俊哉, 久住 拓矢, 松本 賢人, 姫野 修司
    2024 年 35 巻 p. 36-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    下水汚泥と食品廃棄物(FW)の混合嫌気性消化におけるシナジー効果(相乗効果)の検証を目的として回分実験と連続実験を実施し,中でも難分解性の余剰汚泥のオゾン処理の影響に着目した。回分実験の結果,混合によるバイオガス発生量は予測値を上回ることを確認した。連続実験は,未処理系,オゾン処理系それぞれに,FWを重量比で10,20,30 %追加投入して運転した。いずれもバイオガス発生量は効率的に増加し,10,20 %投入ではFWの正味のバイオガス発生量は918 NmL/g-VS以上の高い値が算出された。一方,30 %投入の運転では,未処理系は665 NmL/g-VSに大きく低下したのに対し,オゾン処理系は1,036 NmL/g-VSと高い値を保持し,高負荷条件におけるオゾン処理系の優位性が示された。さらに,脱水試験の結果からオゾン処理系はFWを投入しても脱水汚泥重量の増加が起こりにくいと考えられた。
  • ──21年間の都道府県パネルデータ分析──
    笹尾 俊明
    2024 年 35 巻 p. 47-60
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/21
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    21年間の都道府県パネルデータを用いて,産業廃棄物(産廃)税の導入が産廃の排出量と最終処分量に与える影響について,課税方式,各自治体の経済状況,産廃の搬入規制,時間効果を考慮して分析した。基本的な固定効果モデルと差の差(Difference-in-differences:DID)分析の結果からは,いずれの課税方式でも統計学的に有意な排出削減効果は確認されなかった。最終処分量に関しては,時間効果を考慮しないモデルでは,他の自治体からの搬入を除いた場合,全課税方式で,それを含めた場合,最終処分業者特別徴収方式と焼却・最終処分業者特別徴収方式で減量効果が確認されたものの,それらの効果は時間効果によって打ち消されることを示した。さらに,産廃税の導入年度の違いによるバイアスの影響を取り除いたDID分析を適用した結果,2003年度に最終処分業者特別徴収方式を導入した自治体でのみ,一部期間で継続的に有意な排出抑制・最終処分削減効果が確認された。
  • 清水 祐也, 鈴木 奨士, 森田 修二, 大河原 正文
    2024 年 35 巻 p. 61-72
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/02
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは,自然由来のひ素含有ずりの処分場設計において適正に周辺環境影響評価が可能な数値解析法の構築を目指している。これまでに岩手県のトンネル掘削ずり盛土内におけるひ素の溶出挙動を調査し,盛土内の透水特性や掘削ずりの溶出特性について考察してきた。また,本サイトの掘削ずりを用いてカラム試験を実施し,移流分散方程式の溶出速度を定式化して一定の精度で溶出量を再現した。今回は掘削ずり試料の粒径と散水量の異なる複数条件で不飽和カラム試験を実施し,ひ素溶出にかかわるパラメータを絞り込み,溶出モデルの改良を行なった。また,盛土内では時間経過とともに還元環境へと変化し,ひ素の溶出量が増加する可能性がある。そこで,不飽和カラム試験のひ素溶出量が安定した段階で,散水する水に還元剤を添加することでカラム内を還元環境にすることで生じるひ素溶出量の変化を確認し,この変化の溶出モデルへの導入について検討した。
  • 田畑 智佑, 中谷 隼, 林 徹, 藤田 壮
    2024 年 35 巻 p. 96-106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    政府は2019年に「プラスチック資源循環戦略」を策定し,排出抑制やリサイクルに関するマイルストーンを設定した。これらの達成に効果的な施策を設定するためには,廃プラスチック発生の実態解明が重要である。一方,これまで日本では,廃プラスチック全体の発生量に関する網羅的な地域レベルの分析は十分に行われてこなかった。本研究では全国の市町村・組合を対象に,焼却施設の組成調査から推計した可燃ごみとしての発生量および資源化量から廃プラスチックの発生量を推計し,さらに1人あたり発生量に影響する地域的要因を分析した。分析の結果から,1人あたりの加工食品への消費支出額および宿泊・飲食業の付加価値額の多い市町村・組合の群ほど,廃プラスチック発生量が多い傾向が明らかになった。また,不燃ごみおよび粗大ごみとしての発生量を加えた全国の廃プラスチック全体発生量も推計し,既往の推計では発生量が過小評価されていた可能性を示した。
  • 齋藤 優子, 西山 徹, 熊谷 将吾, 白鳥 寿一, 吉岡 敏明
    2024 年 35 巻 p. 114-127
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    EUはプラスチックのリサイクル促進策として,容器包装と自動車に対して,プラスチックのリサイクル材含有義務を設ける方向で新たな規則案を提案している。本稿では,提案されている含有率によって生じるプラスチックリサイクル材の需要量に関する情報を整理し,試算した。その結果,容器包装では2030年に370万t,2040年に1,000万t以上,自動車では2031年以降に年間75万tのプラスチックリサイクル材の需要がEUで生じると推計された。これらの影響について,自動車に関してはEUに輸入する新車にも適用されることから,わが国の自動車メーカーも国内でのプラスチックリサイクル材の調達が今後必要になることが予想される。世界的な循環経済への流れの中で,わが国としてどのようにプラスチック資源循環を進めるか,対応を急ぐ必要がある。
研究ノート
  • 安藤 悠太, GENOVA Dima Kirilova, 浅利 美鈴
    2024 年 35 巻 p. 73-82
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の市場において,環境配慮の工夫が施された歯ブラシを見かけることは少ない。しかし,欧州においては,さまざまな種類の環境配慮型歯ブラシが店頭で販売されている。そこで,本研究では,日本,ブルガリア,フランスの3国を対象としたアンケート調査により,消費者の環境配慮型歯ブラシの使用実態と,環境配慮意識・行動の差異を明らかにすることを目的とした。その結果,日本においては,環境配慮型歯ブラシの日常的な使用,これまでの使用経験,店頭での接触のいずれもが,ブルガリアとフランスと比べて少ないことがわかった。また,歯ブラシを選ぶときに価格をより重視する傾向にあり,環境配慮性を考慮する人が少ないことが示された。本研究の結果から,日本の消費者の特徴を踏まえた上で環境配慮に向けた取り組みを市場でより強く訴求し,行動変容を促すことが重要であることが示唆された。
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