日本数学教育学会誌
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実践研究
「二つの数量の関係と別の二つの数量との関係を比べる」問題の解答状況に関する調査研究
値上がり問題と値下がり問題を用いて
石田 淳一
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2022 年 104 巻 10 号 p. 2-11

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抄録

 「二つの数量の関係と別の二つの数量との関係を割合を用いて比べる」問題の解答状況を横断的に調べるために,値上がり問題と値下がり問題を用いて,4 年生111人,5 年生117人,6 年生120人に調査を行った.去年の値段が異なり,値上がり分が同じときの今年の野菜の値上がり方を比べる問題の正答率は4 年54.1%,5 年54.7%,6 年47.5%であった.もとの値段が異なり,値引き分が同じときの値引き後のパンの値下がり方を比べる問題の正答率は,4 年20.7%,5 年26.5%,6 年31.7%であった.値上がり問題と値下がり問題の正答率はいずれも学年間に有意差が見られず,値上がり問題よりも値下がり問題がより困難であった.この結果は「二つの数量の関係と別の二つの数量との関係を割合を用いて比べる」問題の成績が学年が上がっても伸びないこと,またいずれの学年も値上がり場面が値下がり場面に変われば成績が低下することを示している.値下がり問題の誤答分析から,値上がり問題で使用した割合の計算による方法を適用できないことや割合の計算による方法を適用できても計算結果の解釈ミスによる誤答が多い実態が明らかになった.

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