日本数学教育学会誌
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実践研究
倍の意味理解を促す指導についての一考察
第三用法における基準量交換の考えに焦点を当てて
田中 英海
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2022 年 104 巻 4 号 p. 3-14

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抄録

 本研究の目的は,倍の意味理解を促すために,基準量と比較量を入れ変えると二量の関係を表す数が互いに逆の関係になるという基準量交換の考えに焦点を当てた教材開発,授業実践を行い,児童の思考の様相を考察することである.

 第4学年を対象に,基準量を求める比の第三用法の場面において白衣の帽子のゴムを取り変える文脈で授業を行った.その結果,元のゴムの長さを1とみて伸びたゴムの長さを3倍とみる見方と,伸びたゴムの長さを1とみて元のゴムの長さを1/3とみる見方が生まれた.1/3の解釈では,整数倍のテープ図,数直線との比較を通して,3等分した量から,1を3等分した1/3を1つ分として1/3,2/3,3/3とする割合の見方へ変わっていった.さらに1/3を3倍と同じように,割合の見方で比較する発言を経て,二量の関係を表す3倍と1/3が互いに逆の関係になることを捉えていった.基準量交換の考えを数直線で比較しながら説明することを通して,倍の意味を割合の見方で解釈している様子が捉えられた.

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© 2022 公益社団法人 日本数学教育学会
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