2012 年 35 巻 4 号 p. 4_101-4_107
倫理的悩みは,倫理的に正しい意思決定をしたが現実的な制約により実行できないときに生じる。本研究は,倫理的悩み尺度精神科版を用いて,人員配置や社会資源が異なる日本とイングランドの精神科看護者の倫理的悩みの程度と頻度を比較し,属性との関連を検討することを目的とする。
有効回答は日本289人,イングランド36人であった。両国の倫理的悩みの程度は,「同僚の非倫理的行為」「少ない職員配置」「権利侵害の黙認」のいずれの下位尺度においても有意差はなかった。一方,倫理的悩みの頻度では,いずれの下位尺度においても両国間で有意な差があり,日本の看護師のほうがより頻繁に倫理的悩みを体験していた。さらに,日本では年齢や経験年数は倫理的悩みに影響していなかったが,イングランドでは年齢や経験年数が高くなると倫理的悩みの程度も頻度も低くなっていた。