抄録
目的:授乳支援を行う助産師の経験を明らかにすることである。
方法:助産師6名に参加観察および半構成的面接法を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した。
結果:助産師は授乳支援を行うなかで【授乳支援に対する信念が揺れ動く】【授乳支援に不確かさや迷いがつきまとう】【母親の実情に沿い,かつ母子の利益が最大限になる授乳支援を開拓する】【授乳支援のむずかしさのなかから母親との隔たりを埋める手がかりを感じとる】【組織の円滑な運営のために個人的な不満や見解は差し控える】という経験をしていた。
結論:本研究の結果から,先行研究で浮かび上がった母乳育児推進を前提とした授乳支援の問題状況が研究参加者の世界にも内在することが見出された。母親の多様性を考慮した豊かな知識を構築するためには,助産師の経験を正当な知識として認め,蓄積していく必要が示唆された。