抄録
高校生が,学期末試験の前後に示す心理的変動を,今後の精神衛生上の,生徒指導の基礎資料とすることを目的として,検討した。
対象は,公立普通科高校生328名である。
心理的変動の指標として,日本版STAI質問紙法を,1学期期末試験の1週間前,前日,1週間後に,又,自覚的身体症状に関するアンケートを試験直後に行い,さらにM-G性格検査を行った。
1. 試験1週間前(以下,試験前)のSTAIは,高校生の我々の標準的な値と一致した。
2. STATE値は,全体では試験前に比べ,試験前日上昇し,1週間後(試験後)下降して前値に復した。しかし,前日値は,上昇,不変,下降の3群に分れ,前日値の上昇群は前値が低値,下降群は高値の者が多かった。試験後の変動も前日値に比べ,下降,不変,上昇の3群に分れ,下降群は前日値が高値,上昇群は低値の者が多かった。
3. M-G性格検査との関係では,試験前のSTATE値は,不適応型,混合型,適応型の順で有意に低値となったが,前日上昇,試験後下降の傾向は,全ての型に共通だった。
4. 自覚的身体症状に関しては,試験前のSTATE値が高値となるに従い,人数,項目数とも多かった。性格別では,不適応型,混合型,適応型の順に多かった。しかし試験前には全て増加し,多群,多項目にわたる症状を表出していた。