日本看護研究学会雑誌
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寝たきり老人における体圧分布の特性
白浜 美香子大串 靖子
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1986 年 9 巻 4 号 p. 4_29-4_36

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抄録

  特別養護老人ホームの32名の老人について運動障害の程度別に仰臥中の体圧を測定した。その結果,体圧の高さやその分布のしかたには運動障害の程度で差異が認められた。
  ① 仰臥位を1時間持続したとき,わずかな体動によって体圧は変化したが,運動障害重度群では,仙骨部の体圧が,最低値でも,運動障害軽度群や健常群の最高値より高かった。
  ② 肩甲部,仙骨部,尾骨部および踵部の4部位における体圧は,重度群の場合,仙骨部,尾骨部の体圧がきわめて高いのに対して肩甲部,踵部の体圧は低く,受圧範囲が殿部に集中していた。一方,健常群では仙骨部,尾骨部についで踵部の体圧が重度群のそれより高く,部位間の体圧の差が重度群ほど著しくなかった。したがって健常群では受圧範囲が広い範囲に,ほぼ均等に分布していた。
 これらのことから,運動障害重度群における体圧の高さや分布の特性には,寝たきり状態にともなう運動不足や加齢による皮下脂肪の減少,筋萎縮,脊柱の変形,下肢関節の拘縮などが仙骨部を中心とした部位の骨突出をつよめ,さらに麻痺や運動障害による効果的な体動の欠如などが関連しているものと考えられた。

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© 1986 一般社団法人 日本看護研究学会
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