日本看護研究学会雑誌
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視覚遮断状況下での空間認知と時間認知
-アイマスクを用いての体験学習から-
服部 朝子
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1986 年 9 巻 4 号 p. 4_78-4_88

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抄録

  人間を統合された全体的存在として捉える立場は,看護科学の立場として諸家の同意を得ている。そして,人間の統合性・全体性を表現する上で,時間・空間概念が重要な鍵を握っている。しかし,看護を学び始めて間のない学生達が,「統合された全体的存在」という意味を,真に理解することは甚だ難しい。そこでその意味を,学生達に実感的に理解させるために,視覚遮断状況下で日常生活活動を体験させる試みを行った。その結果,視覚遮断状況下では,1)空間認知が曖昧で不鮮明になり,2)残存感覚を用いても抽象概念の把握が困難であり,3)動作が緩やかで大きくなるため,結果として時間認知が実際よりも遅くなる。それに伴い日常生活動作は,残存感覚をフルに生かし,行動をパターン化するというように変化する。視覚遮断状況下での体験学習は,統合された全体的存在の意味を理解する上で,学習素材として意義がある。

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© 1986 一般社団法人 日本看護研究学会
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