日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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シンポジウム1
心臓病変
サルコイドーシスの新しい診断基準と診療ガイドラインをめぐって
寺﨑 文生
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2015 年 35 巻 Suppl1 号 p. 33

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抄録

サルコイドーシスの心臓病変(心臓サルコイドーシス)の診断は必ずしも容易ではなく、拡張型心筋症、慢性心筋炎、巨細胞性心筋炎などとの鑑別が困難で、剖検・心臓移植・左室形成術などにより得られた心筋サンプルの組織学的な検索で、初めて同症と診断されるケースもある。一方近年、18F-FDG PETや心臓 MRI、心エコー図など画像診断技術の目覚ましい進歩がある。医師の経験と症例の積み重ねなどで、より多くの患者で心臓サルコイドーシスが疑われ、診断されるようになった。2015 年 1 月から新たに難病法が施行され、指定難病であるサルコイドーシスについて、日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会と厚生労働省のびまん性肺疾患に関する調査研究班との合同で診断基準の見直しが行われた(資料 1)。この診断基準には、日本循環器学会により 2014 年から 2 年間の予定で作成作業が進められている「心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン」で提言される「心臓病変の診断の手引き」の骨子が既に反映されている。心臓以外の臓器で、組織学的あるいは臨床的にサルコイドーシスと診断されている患者に、何等かの心症状がみられた場合には、心臓病変の存在を疑い検査を進める。心内膜心筋生検あるいは手術などによって心筋内に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が認められた場合には、心臓サルコイドーシス(サルコイドーシスの組織診断群)と診断される。組織学的な検査が施行されない場合や心筋にサルコイド肉芽腫が証明されない場合には、「心臓病変の臨床所見」について検索を行い、1) 主徴候 5 項目中 2 項目以上が陽性の場合、または 2) 主徴候 5 項目中 1 項目が陽性で、副徴候 3 項目中 2 項目以上が陽性の場合に心臓サルコイドーシス(臨床診断)と診断する。最も注意すべきは、この「心臓病変の診断の手引き」は、あくまで、「他の臓器でサルコイドーシスと診断されている場合」との条件付きである点である。心臓以外の臓器では、サルコイドーシスの臨床像が明らかでないが、心筋生検など組織学的に心臓サルコイドーシスと診断される症例、あるいは臨床的に心臓サルコイドーシスが強く疑われる症例が以前から報告されている。欧米の論文では、「isolated cardiac sarcoidosis」という表現が用いられており、従来邦訳として「孤発性心臓サルコイドーシス」が多く使用されてきた。日本循環器学会の「心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン」では「心臓限局性サルコイドーシス」という用語が提唱される予定である。基本的には、原因の明らかではない心筋疾患において、臨床的に心臓限局性サルコイドーシスを見落とすことなく、しかも誤診することなく、早期に適切な治療を開始することが重要であり、同症の診断基準の作成にあたっては現時点で最も適切と考えられる要件を慎重に検討することが必要と考えられる。資料 1 厚生労働省ホームページ [平成 27 年 1 月 1 日施行の指定難病(新規)](http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062437.html)

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© 2015 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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