日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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総説
サルコイドーシスに関連する肺高血圧症とその治療戦略
半田 知宏 長井 苑子谷澤 公伸泉 孝英平井 豊博
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2022 年 42 巻 1_2 号 p. 24-28

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抄録

サルコイドーシスに合併する肺高血圧症(Sarcoidosis-associated pulmonary hypertension: SAPH)はサルコイドーシス患者の5~30%で認められ,肺移植登録される重症例ではその頻度は70%以上にまで上昇する.SAPHは肺線維症を呈する症例に認めることが多いが,肺野病変を認めない症例も存在し,その発症には肺動静脈病変,肺門リンパ節腫大や線維性縦隔炎による中枢肺動脈の圧排,心病変,肝臓病変,睡眠時無呼吸症候群など多様な病態が関与し得る.このため,PHの臨床分類では第5群:詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症に分類されている. 症状や呼吸機能検査,CT所見などからSAPHが疑われる症例では心エコーによるスクリーニングを行い,総合的にSAPHが疑われれば右心カテーテル検査を施行することが推奨される.SAPHの国際レジストリーに6年間で登録された159例のprecapillary PHにおける1年,3年,5年の非移植生存期間はそれぞれ89.2%,71.7%,62.0%であり,SAPHの予後は不良である.SAPHの治療は,低酸素の改善,原因となる併存疾患の治療,サルコイドーシス自体の治療が基本となる.肺線維症を合併しない症例におけるステロイドの有効性を示した報告もあるが,ステロイドや免疫抑制薬の効果は未確立である.肺血管拡張薬の効果に関する検討のほとんどが少人数を対象とした非ランダム化試験であり,多くの報告では血行動態の改善が示されているが,運動耐容能やQOLへの効果は明らかではない.重症例では肺移植が考慮され,肺移植後の予後は他の肺移植適応疾患と変わらない.SAPHの発症には肺や縦隔の線維化が関与する症例が多いために抗線維化薬の効果も期待されるが,その有効性は現在のところ不明である.SAPHの治療に関する知見は十分ではなく,今後の更なる集積が期待される.

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© 2022 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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