抄録
頬骨骨折後に発症した口腔内の神経障害性疼痛の1症例を報告する.24歳の女性で,4カ月前に交通事故による左頬骨骨折で他医にて頬骨を金属プレートで固定する手術を受けた.手術後口腔内の疼痛はなく,順調に回復した.しかし,2カ月前から口腔内に疼痛が起こり,歯科に紹介された.ニューロセンソリーステントと呼ばれる口内装置を作製し,疼痛部位を保護するために表面麻酔薬と義歯安定剤を混和したゲルを1日4~5回内面に塗布し,装着させた.ステント使用開始から6週間後に疼痛は軽減した.その後,心療内科に紹介し,歯科で処方が困難な抗うつ薬を主体とした薬物療法が行われた.疼痛は服薬開始から6カ月後に日常生活に差し支えない程度に軽快した.口腔内の神経障害性疼痛には医科と歯科の連携が有効な手段のひとつであることが示唆された.