日本ペインクリニック学会誌
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原著
脳脊髄液減少症に対する硬膜外腔への生理食塩液注入法の有効性
前川 紀雅森本 昌宏森本 充男打田 智久白井 達吉岡 愛森本 悦司古賀 義久
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2009 年 16 巻 2 号 p. 148-152

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抄録

脳脊髄液減少症は起立性頭痛を特徴とし,脳脊髄液の減少により生じる.これに対する治療法として,硬膜外自家血注入法(自家血注入)が広く用いられているが,硬膜外生理食塩液注入法(生食注入)が診断法の1つとして推奨されている.筆者らは,2カ月から30年間脳脊髄液減少症に罹患していた10症例(外傷性8症例,特発性1症例,脊麻後頭痛1症例)の治療としてX線透視下に生食注入(造影剤との混合注入)を行い,その有効性について検討した.これらのうち6例では自家血注入の既往があり,RI脳槽シンチグラムで4症例で髄液の漏出,5症例で早期膀胱内集積があった.生食注入により起立性頭痛,視機能異常や耳鳴りなどの症状はすべての症例(7症例では1回,3症例では2回の施行)で改善した.以上より,脳脊髄液減少症に対して保存的療法が奏効しないときには,生食注入は試みてよい治療法の1つであると考えられた.

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© 2009 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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