日本ペインクリニック学会誌
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症例
左右の交互刺激を用いた幻肢痛治療法により慢性痛が改善した症例
天野 玉記精山 明敏十一 元三
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2010 年 17 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

治療に難渋しやすい慢性痛の1つに幻肢痛があり,その機序には痛みに関する記憶が関与すると推測されている.心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder:PTSD)に対する治療法の1つとして精神医療で用いられるようになった眼球運動による脱感作および再処理法(eye movement desensitization and reprocessing:EMDR)は,トラウマ体験の記憶と感情の処理により症状を寛解させると考えられている.同様の技法が幻肢痛の治療(幻肢痛プロトコル)に試みられている.今回,腰椎椎間板ヘルニア手術時の事故で左下肢の麻痺が起こり,8年間激しい慢性痛があった70歳の女性にEMDRを実施し,痛みが著明に軽減した症例を報告する.本症例では,事故に関連した場面等を想起させた状態で,左右交互の眼球運動を繰り返しながら想起場面と関連した感情を鎮静化しつつ認知の修正を試みた.その結果,治療セッション中に痛みが軽減し,ほぼ消失した.治療から3カ月後にも痛みは再発していなかった.心因性の機序が関与した慢性痛に,EMDRの幻肢痛プロトコルが治療法の1つになりうることが示唆された.

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© 2010 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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