抄録
痛みは不快な感覚・情動を伴う主観的体験であり,そのとらえ方はヒトによって大きく異なることから,客観的評価を行うことが困難であった.近年,画像医学の技術進歩に伴い,ポジトロン放出断層撮影(PET),機能的磁気共鳴画像(fMRI),核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)をはじめとする機能的画像診断法が確立し,痛みの脳内機構に関してさまざまな知見が明らかにされている.また,機能的画像診断法のみならず,3D-MRIを応用したvoxel-based morphometry(VBM)によって脳内組織の容積を直接測定する形態学的画像診断法も確立されつつある.これらの研究から,慢性痛患者では痛みの認知面,情動面に関与する部位の神経化学的・解剖学的・機能的変化が深く関与していることが示唆されている.これらの画像診断法をもとに明らかにされてきた痛みに関するさまざまな研究とその成果について概説する.