日本ペインクリニック学会誌
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症例
膝蓋下脂肪体炎により下肢の痛みを生じていた1症例
山本 洋介山田 信一有川 貴子永田 環中川 景子大石 羊子澤田 麻衣子福重 哲志牛島 一男
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2010 年 17 巻 4 号 p. 488-490

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抄録

膝蓋下脂肪体炎で下肢痛を生じ,歩行困難となった症例を報告する.症例は 81歳の男性で,当科を受診する 1カ月半前に,右大腿前面から膝に及ぶ痛みが起こった. MRI検査により L3/4外側ヘルニアと判断され,仙骨硬膜外ブロックや L3の神経根ブロックを数回受けたが,痛みは軽減しなかった.膝の MRI検査で外側半月板変性も疑われ,膝関節内に局所麻酔薬の注入を受けたが,痛みは軽減せず,歩行困難となったので当科を紹介された.痛みは視覚アナログスケールで 83 mmであり,大腿四頭筋は萎縮し,筋の両側辺縁に沿った部位と膝関節周囲に強い圧痛があった.右大腿部の感覚障害はなかった.痛みが膝から始まり,膝蓋下に強い圧痛があったので,膝蓋下脂肪体炎を疑い,診断的ブロックとして,膝蓋下脂肪体に 1%メピバカイン 3.5 mlとベタメタゾン 2.5 mgを局所注入した.ブロック直後から痛みは軽減し,歩行が可能となった.その後,局所麻酔薬の注入を計 3回行い,1カ月後からは鎮痛薬内服だけで,膝の違和感が残っただけであった.大腿四頭筋の萎縮は,朝,夜に坐位からの起立運動を行うことで改善し,2カ月後に違和感も消失した.

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© 2010 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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