抄録
脊髄硬膜外膿瘍は腰背部痛の原因としてまれであるが,重篤な神経障害を生じることがある.われわれは飯塚病院で2001年から8年間に脊髄硬膜外膿瘍と診断された16症例の患者背景,症状,検査所見,治療,予後を後ろ向きに検討した.脊髄硬膜外膿瘍の頻度は入院7,000症例に1症例であった.平均年齢は66歳で,多くは糖尿病,アルコール多飲などの危険因子を有していた.全症例で,腰背部痛が生じ,何らかの炎症所見があり,MRIで確定診断された.起因菌はブドウ球菌が最も多かった.すべての症例に抗菌薬が投与され,8症例で減圧手術が行われた.神経学的異常が軽微な症例では,内科的治療のみでも予後が良好であった.減圧手術の有無にかかわらず治療開始直前の神経学的異常が重篤なほど,予後は不良であった.腰背部痛で発熱や炎症所見がある場合には脊髄硬膜外膿瘍を疑い,早期にMRI検査を行う必要があり,顕著な神経学的異常がある場合には速やかな減圧手術が必要である.