2013 年 20 巻 1 号 p. 44-47
硬膜外カテーテル挿入後に深部知覚異常を呈し,診断に難渋した症例を経験した.症例は78歳の男性で,右上肢帯状疱疹後神経痛に対しC6/7より硬膜外カテーテルを挿入した.局所麻酔薬の持続投与を開始したところ,痛みは完全に消失した(皮疹部:右C6領域).1時間の安静後,左足に違和感を訴えたが知覚·運動覚ともに正常であったため経過を観察した.さらに3時間後に起立困難となったため,持続投与を中止し造影CTを撮影した.CTでは異常所見はなかったが,深部知覚異常を認め脊髄後索障害が疑われたため,カテーテルを抜去し頸部MRIを撮影した.MRIで右C7神経根を圧迫する椎間板ヘルニアが確認された.カテーテルの抜去によりただちに左下肢の症状は軽減し,1週間後にはほぼ消失した.深部知覚異常は,ヘルニアにより後側方にシフトした脊髄後索を硬膜外カテーテルが圧迫していたために生じたと考えられた.