日本ペインクリニック学会誌
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症例
慢性B型肝炎治療薬adefovirにより生じた薬剤性骨軟化症による全身痛の1例
上村 裕平平川 奈緒美笹栗 智子江口 有一郎
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2014 年 21 巻 1 号 p. 45-49

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抄録
薬剤性骨軟化症による全身痛の症例を経験した.原因薬剤はB型肝炎治療薬adefovir dipivoxilと考えられた.肝炎患者に対する同剤の投与で骨軟化症を引き起こした報告はきわめてまれであり,診断に難渋した.42歳,男性.5年前よりB型肝炎にて加療中であった.当科初診9カ月前から両膝痛,両足関節痛,腰背部痛が出現した.膠原病や神経筋疾患などを疑われ,複数科で数カ月にわたり精査をされたが原因不明であり,当科へ紹介となった.薬物療法や硬膜外ブロックなどでは痛みの軽減なく,入院加療を行った.その際の頸椎MRI検査で頸椎棘突起骨折を認めた.血液検査ではアルカリホスファターゼの上昇と血清リンの低下,腎機能障害を認めた.骨塩量も低下しており骨代謝異常を疑った.リンとビタミンDの補充療法を行ったが,症状は不変であった.精査の結果,Fanconi症候群による低リン血症とそれに伴う骨軟化症が疑われた.Fanconi症候群の原因として,adefovir dipivoxilが疑われたため,休薬したところ著明な痛みの改善と骨塩量の上昇を認めた.
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© 2014 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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