抄録
難治性がん性痛の治療中,くも膜下鎮痛(皮下ポート)法に合併した細菌性髄膜炎をポート抜去せずに加療した1例を経験した.症例は50歳代,女性.再発直腸がんの仙骨浸潤で強い肛門痛,会陰痛のため腹臥位の生活が続いていた.放射線治療,サドルブロック(フェノール),高用量オピオイドでは鎮痛が得られず,副作用として重篤なせん妄を認めたが,くも膜下(皮下ポート)鎮痛法により仰臥位の生活も可能になった.ポート造設27日後,細菌性髄膜炎を合併したが,ポート抜去せず抗生物質(静脈/髄腔内)注入による治療を優先した.造設75日後には軽快し,6カ月後に十分な鎮痛下に在宅にて死亡した(モルヒネ8 mg/日,ブピバカイン50 mg/日).くも膜下鎮痛法では感染したポートは抜去するのが一般的であるが,抜去に伴う痛みの再増悪,オピオイドの合併症を考慮すれば,安全性に検討の余地はあるものの非抜去での加療も有効な治療法の一つである.