日本ペインクリニック学会誌
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症例
神経ブロックにより診断が遅れた症候性三叉神経痛の1例
秋山 絢子田辺 瀬良美肥川 義雄
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2015 年 22 巻 2 号 p. 92-95

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抄録

単回の神経ブロックにより三叉神経痛が軽快した患者がその後のCTで髄膜腫と診断され,ブロックの施行によって結果として診断が遅れた症候性三叉神経痛の症例を経験したので報告する.患者は78歳,男性.右鼻腔内の痛みを主訴に耳鼻科を受診した.耳鼻科領域のCT,診察で異常は指摘されず,特発性三叉神経痛の診断でカルバマゼピン(CBZ)内服が開始された.痛みは軽減するも消失せず当科紹介され,当科では症状から特発性三叉神経痛と診断し,高濃度テトラカインによる右眼窩下神経ブロックを施行した.痛みは消失し,当科は終診とした.その後CBZを中止したにもかかわらず,ふらつきが続き,近医で頭部の画像検査を施行したところ小脳橋角部に髄膜腫を認め,脳外科で手術を施行した.腫瘍は3カ月後に同じ大きさまで増大し,悪性髄膜腫と診断され,再手術を行った.終診後1年が経過したが,痛みの再発なく経過している.三叉神経痛患者では常に症候性を念頭に置いて随伴症状や神経学的所見を確認し,まずは可能なかぎりMRI画像検査を考慮すべきであると痛感した.

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© 2015 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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