2015 年 22 巻 4 号 p. 545-548
症例は68歳,女性.生体肝移植後で免疫抑制剤を内服していた.左第5胸神経領域に重症の帯状疱疹を発症し,皮膚科で抗ウイルス薬による治療を行ったが高度の痛みが続き,当科を発症4日目に受診した.発症9日目からアセトアミノフェンに代えてトラマドール75 mg/日の投与を開始し,リドカインの点滴静注,ノルトリプチリンの内服により急性期の鎮痛を行った.皮疹の痂皮化後は浸潤ブロックを付け加えた.これにより徐々に痛みは軽減し,トラマドール中止後も痛みが遷延・再燃することなく経過した.臓器移植後の免疫抑制状態では,帯状疱疹罹患および帯状疱疹後神経痛への移行頻度が高くなるため,急性期の集中的な治療が必要であるが,選択肢が制限される.非ステロイド性抗炎症薬の効果が乏しく硬膜外ブロックなどの脊髄幹ブロックが禁忌である場合の急性期帯状疱疹痛に,トラマドールは有用であると考えられた.