日本ペインクリニック学会誌
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症例
未然に抗血小板薬の投与を把握することができなかった硬膜外ブロック後の急性硬膜外血腫の1例
神山 彩中島 邦枝齋藤 繁田中 陽
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2016 年 23 巻 2 号 p. 93-96

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抄録

塩酸チクロピジンを内服している症例に硬膜外ブロックを行い,急性硬膜外血腫を生じたので報告する.症例は80歳,女性.既往歴に心房細動,脳梗塞後の左不全麻痺があった.帯状疱疹後神経痛の症状の悪化があり,硬膜外ブロック目的に前医から紹介,転院となった.紹介状に抗凝固薬・抗血小板薬内服の記載はなく,家族も把握していなかった.実際には塩酸チクロピジンを内服していたが事前に確認できず,休薬しないまま入院当日にTh4/5から単回投与の硬膜外ブロックを実施した.約8時間後徐々に下肢の運動障害が出現し,温痛覚・触圧覚も消失した.その後Th10以下の対麻痺もあったが,温痛覚・触覚が一部改善するなど進行性ではなかったため経過観察とした.第3病日に胸腰椎MRIを実施し,Th2∼Th11レベルで血腫形成が確認された.外科的治療は行わず,経過観察となった.抗血小板薬内服症例での硬膜外ブロックでは穿刺前に十分な休薬期間をとることが必要であり,穿刺後は常に硬膜外血腫形成の可能性を念頭に置き観察することが大切である.また,脳梗塞,心房細動の既往のある症例や高齢の場合は,詳細な問診の実施とブロックの適用可否の十分な検討が必要である.

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© 2016 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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