抄録
線維筋痛症(fibromyalgia syndrome:FMS)は痛みだけでなく種々の身体症状や精神症状を呈する疾患である.本邦では心理尺度を用いたFMS患者の心理的特徴に関する報告は少なく,これを調査し把握することを目的とした.FMS患者(n=20)で精神健康調査票(general health questionnaire:GHQ)を用いて調査し,FMS以外の慢性痛患者(非FMS慢性痛患者,n=20)を対照に比較した.さらに,FMS患者にはハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton’s rating scale for depression:HRSD)による評価を行った.罹病期間はFMS患者24.1カ月,非FMS慢性痛患者54.1カ月であった.FMS患者のGHQ総合得点と全下位尺度得点は非FMS慢性痛患者より有意に高く,HRSDの結果中等度のうつ状態にあることが示された.これらのことから,FMS患者は著しく精神的健康度が低く,心身ともに疲弊していることが示唆され,治療の際には痛みだけでなく精神症状や心理社会的要因も含めた評価と治療が不可欠であると考えられる.