抄録
【背景】2008年国際疼痛学会の定義により,椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで生じる脊髄神経根症(Rad-P)は神経障害痛に分類されるが,帯状疱疹後神経痛などの従来からの神経障害痛(cNeP)に比しNSAIDsへの反応性が高く,臨床的にはその病態が異なる可能性が示唆される.そこで,cNePとRad-Pの相違を,マギル疼痛質問票日本語版(MPQ)を用いて,患者の訴える痛みの性質の観点から評価した.【方法】cNeP群362人とRad-P群100人を対象にMPQを調査し,MPQの20要素について因子分析を行った.得られたMPQの要素から2群を効率よく分類できるか判別分析を用いて検討した.【結果】因子分析では両群ともMPQの20要素中それぞれ14要素が抽出され,そのうち11要素が共通していた.抽出された要素を用いた判別分析では,両群の判別率は41%であり,痛みの性質から2群を分類できなかった(p=0.99).【考察】異なる痛みの性質は異なる病態に起因すると考えられている.MPQで評価したRad-P患者の痛みの性質はcNePと類似しており,その病態はcNePと同様であることが示唆された.