抄録
ペインクリニシャンによる認知行動療法的な治療により,痛みが軽減し,多量の抗不安薬依存から離脱できた慢性術後痛の症例を報告する.症例は47歳,女性.5年前に胆石症にて胆のう摘出術を受け,以後腹部に痛みを生ずるようになった.痛みは持続的であり,時に発作的に増悪するため,他院ペインクリニック受診に加え,しばしば他院救急外来をも受診していた.当科受診時には抗不安薬であるエチゾラム(0.5 mg)を1日最高12錠服用していた.当初は持続硬膜外ブロック,局所直線偏光近赤外線照射を行ったが,痛みはほとんど軽減しなかった.慢性痛に伴うエチゾラム依存症と判断し,初診6カ月後に認知行動療法的な治療を導入した.その結果,エチゾラムの服用が徐々に少なくなり,表情も明るさを取り戻すようになり,導入6カ月後には痛みが軽減し,エチゾラムの多量服用から離脱できた.