抄録
後頭神経痛の診断で紹介された,環軸椎化膿性椎体炎症例の治療を経験した.症例は61歳の男性で,右後頭部痛,右後頸部痛と頭部回旋困難を主訴に精査を受けたが異常所見はなく,各種鎮痛薬の内服でも痛みが軽減しないために紹介された.特発性後頭神経痛と考え,大後頭神経ブロックや浅頸神経叢ブロック,ペンタゾシン投与をしたが効果は得られず,微熱がみられた.このため,膠原病などの疾患の鑑別を目的にコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムの静脈内投与を行ったところ,痛みが劇的に消失した.本経過から感染性骨関節疾患を疑い,再度頸椎を精査した結果,C1-2の化膿性椎体炎と診断した.抗菌薬投与と頭部の外固定を行った結果,炎症所見は陰性化し,保存的加療で治療を終了しえた.本経験から,頭頸部痛に対して神経ブロックを行っても期待される鎮痛効果が得られない場合には,まれな疾患ではあるが,頸椎椎体炎の存在も考慮すべきであると結論した.