論文ID: 18-0024
喫煙はさまざまながんの発生に関連していることが明らかであるにもかかわらず,がんと診断された後も喫煙を継続する患者がいる.しかし喫煙はがん患者のQOLに最も影響する“痛み”にも悪影響を及ぼす.喫煙者は非喫煙者に比較してがんに関連する痛みの頻度や程度が大きい.ニコチンは急性作用として鎮痛効果を有するが,喫煙者のような慢性的なニコチン摂取は痛みのプロセシングを変化させ,さらにニコチン摂取の中断による離脱症状で痛覚過敏が生じる.喫煙は創傷治癒を遅延させ組織損傷を助長する.また,さまざまな薬物と相互作用があり抗がん薬や鎮痛薬の作用を減じて痛みを増悪させるリスクもある.しかし痛みがあると喫煙欲求が増すため患者は痛みと喫煙の悪循環に陥る.よって,がんと診断された時点から痛み治療に並行して禁煙支援を行うことが,がん患者のQOL維持に重要である.