日本ペインクリニック学会誌
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テトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネルの痛覚制御機構における役割
緒方 宣邦松冨 智哉
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2003 年 10 巻 1 号 p. 1-12

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抄録
電位依存性ナトリウムチャネル (Naチャネル) は興奮性細胞が活動電位を引き起こすために不可欠な役割を演じているイオンチャネルであり, その名のごとく膜電位の変化によってゲートが開閉し, ナトリウムイオンを細胞内外の濃度差に応じて通過させ, それによって細胞膜の荷電状態を変化させる膜蛋白である. Naチャネルは従来は比較的種差や組織差の少ない“面白みに欠ける”イオンチャネルであると考えられてきたが, 最近の遺伝子クローニングにより, 多くのサブタイプの存在が明らかとなり, 機能的にもさまざまな細胞機能にかかわっていることが明らかとなってきた. 一方では, 新しい実験技術の開発により, そのチャネルポアや電位センサーなどに関するオングストロームオーダーの3次元立体構造すら明らかにされつつある. 最近のNaチャネル研究における重要なポイントは組織特異性をもつユニークなサブタイプの存在である. とりわけ末梢知覚神経節の小型侵害受容ニューロンに特異的に発現し, フグ毒テトロドトキシン (tetrodotoxin: TTX) に感受性をもたないTTX-非感受性Naチャネルは, 痛覚伝導機序あるいは病的疼痛の発現などに重要な役割を担っている可能性があり, 新しい鎮痛薬の開発などの面からも注目されている. 本稿では, まず最近のNaチャネル研究の進展について概説し, さらにTTX-非感受性Naチャネルを中心に, Naチャネルの疼痛発現への関与について紹介する.
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