日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
脊髄における痛覚伝達機構
吉村 恵又吉 達古江 秀昌中塚 映政片渕 俊彦
著者情報
キーワード: 軸索発芽, 慢性炎症
ジャーナル フリー

2003 年 10 巻 4 号 p. 471-475

詳細
抄録

脊髄内アロディニアの発生機序として, 非侵害性感覚情報を伝えるAβ線維の軸索発芽が示唆されている. この軸索発芽は坐骨神経切断モデルと炎症モデルラットで報告されているが, その病態はまったく異なっている. 坐骨神経切断モデルにおいては, C線維の脱落がトリガーになっていると考えられている一方, 炎症モデルではC線維の脱落はなく, 感覚受容体の感作による入力の増大が誘因と推測されるが, その発生機序には不明な点が多い. そこで, 炎症モデルラットの脊髄膠様質を対象に, in vivoおよびin vivoのスライス標本を用い, Aβ線維の軸索発芽をトリガーする因子を炎症初期のラットを用いて検討した. その結果, in vivo標本を用いたpatch-clamp記録では自発性入力の増大と, 多くの非侵害性受容体の特徴である慣れ現象の消失が起こり, 脊髄内におけるグルタミン酸放出の著明な増大が起こることが観察された. それに加え, 炎症に伴って産生されるBDNFによっても膠様質における伝達物質の放出増大がみられた. 今のところ, これらの変化がどのようにAβ線維の軸索発芽を誘起し, 膠様質に誘引するかは不明であるが, 少なくとも何らかの重要な役割を果たしているものと推測される.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
次の記事
feedback
Top