日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
腰椎転移による癌性疼痛にモルヒネ徐放剤から一部フェンタニルパッチへの変更が奏効した1症例
松崎 孝西江 宏行溝渕 知司佐々木 俊弘中塚 秀輝松三 昌樹横山 正尚森田 潔藤井 洋泉高島 武章
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 14 巻 2 号 p. 140-143

詳細
抄録
モルヒネは骨転移による癌性疼痛に対しては効果が乏しいことが多い. 今回われわれは, 骨転移による癌性疼痛患者に, モルヒネ徐放剤から経皮吸収型フェンタニルへの一部変更を行い, 良好な鎮痛効果を得た.
患者は骨破壊を伴う腰椎転移のために強い腰背部痛と下肢痛を訴えていた. モルヒネを増量し, さらに種々の鎮痛補助薬を投与したが疼痛軽減は認められず, 副作用が悪化した. このため, 経口モルヒネを一部フェンタニルパッチに変更したところ, 著明な疼痛の改善および副作用の軽減を認めた. 変更後のモルヒネおよびモルヒネ6グルコン酸 (M6G), モルヒネ3グルコン酸 (M3G) の血中濃度はそれぞれ, 80・355・2,899ng/mlという結果であり, モルヒネ:M6G:M3Gの比は1:5:32であった. M3Gの血中濃度が高く, モルヒネおよびM6Gの鎮痛作用に拮抗していた可能性が示唆された. フェンタニルが奏効した理由として, フェンタニルにはモルヒネのような活性代謝産物がないことや, サブクラスの異なるμ受容体に作用して, モルヒネとフェンタニルの併用により鎮痛効果が増強した可能性が示唆された.
モルヒネで有効性を得にくい癌性疼痛に対し, モルヒネからフェンタニルへの変更は試みてよい治療と思われる.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
前の記事 次の記事
feedback
Top