1995 年 2 巻 3 号 p. 394-398
目的: 骨粗鬆症は高齢者, とくに女性に多い慢性疾患として近年ペインクリニックを訪れることも多い. 本疾患においては疼痛管理と同時に骨量の減少を抑えることも重要である. 今回, 桂枝加朮附湯を長期にわたって投与された症例の骨量の推移を検討し, 同時に疼痛の経時的変化を追跡したので報告する.
対象と方法: 対象は骨粗鬆症と診断され桂枝加朮附湯を9カ月以上にわたって投与された15例である. 骨量測定法は microdensitometory 法 (MD法) を用い3カ月ごとに測定した. また同時に疼痛の推移も検討した. 一方, 対照として骨粗鬆症と診断されたものの, その後受診しなくなり治療の継続が途絶えた患者で, 再び当科を訪れた10例を無治療群として骨量測定した.
結果: MD法の主要なパラメーターであるMCI・ΣGS/Dでみると対照群は約10カ月に10%の骨量減少を認めた. 桂枝加朮附湯投与群は3, 6, 9カ月後においても骨量は初診時との差は認められないか有意な増加を認めた. また疼痛は有意に軽減した.
結論: 桂枝加朮附湯は骨粗鬆症患者の疼痛を軽減するだけでなく, 骨量の減少も抑制した.