日本ペインクリニック学会誌
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頸部, 上胸部交感神経支配の分節性に関する研究
サーモグラフィによる臨床的検討
矢部 雅哉
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1996 年 3 巻 1 号 p. 14-21

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抄録

星状神経節ブロック治療が対象となった突発性難聴患者19名を含む22名について第5頸椎横突起における頸部交感神経ブロック (C5-SGB) と第7頸椎横突起におけるブロック (C7-SGB) を行い, 薬液の広がる範囲に対して, サーモグラフィを用いて皮膚温の上昇する部位を調べ, 頸部交感神経系の支配と分節性を検討した.
透視下で部位を確認して2%メピバカイン1.5mlとイオトロラン1.5mlの合計3mlの薬液を注入した. C7-SGBで薬液が第2胸椎椎体下縁まで広がるまで注入した研究を追加し, 以上をあわせて薬液の広がりの下端で第6頸椎椎体下端までの3例 (下端C6群), 第7頸椎椎体下縁までの7例 (下端C7群), 第1胸椎椎体下端までの16例 (下端T1群), 第2胸椎椎体下端までの9例 (下端T2群) の4群に分けサーモグラフィによる左右の温度差の経時的な変化を検討した.
結果は, 上肢において第3指, 第4指, 第5指, 小指球, 手背尺側で下端T2群が他の群より有意に皮膚温が高かった.
手の尺側, 第3指, 4指, 5指は第2胸椎椎体の高さの交感神経に支配され, 頸部交感神経ブロックで手全体の交感神経を遮断し, 皮膚温上昇を得るには第2胸椎椎体下縁までの薬液の広がりを必要とすることが明らかになった.

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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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