日本ペインクリニック学会誌
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高齢者の開腹手術に対する術後疼痛管理
手術部位による硬膜外鎮痛効果の検討
表 圭一山澤 弦松本 真希岩崎 寛並木 昭義
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1997 年 4 巻 4 号 p. 467-471

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抄録

目的: 高齢者に対する開腹手術術後疼痛管理としてブピバカインとフェンタニルの同時硬膜外持続投与による硬膜外鎮痛法を用い, その鎮痛効果, 副作用出現について, 手術部位による差を retrospective に検討した. 方法: 70歳以上で, 硬膜外麻酔併用全身麻酔下に胆嚢摘出術 (n=15), 胃切除術(n=19), 結腸切除術(n=24)が施行された58名の患者を対象とした. 手術終了直前より1時間あたり0.25%ブピバカイン2ml+フェンタニル8.3~12.5μgの投与速度にて持続硬膜外鎮痛法を開始した. 術後1週間にわたる疼痛状態, 硬膜外鎮痛法の使用期間, 鎮痛薬の追加投与量, 合併症の発生について手術部位別に調査した. 結果: 硬膜外鎮痛法の使用期間は, 胃切除術, 結腸切除術に比べ, 胆嚢摘出術で有意に (p<0.05) 短かった. 硬膜外鎮痛法の使用終了後は, 3手術ともに追加鎮痛薬の使用頻度が増加した. 硬膜外鎮痛法に関連したと考えられる合併症として, 血圧低下, 呼吸抑制 (呼吸数8回/分), 悪心・嘔吐, よろめきが認められ, その頻度は胆嚢摘出術に比べ, 胃切除術, 結腸切除術において高い傾向がみられたが, 統計学的に有意ではなかった. 結論: 高齢者に対するブピバカイン+フェンタニル併用による硬膜外鎮痛法は, 胆嚢摘出術, 胃切除術および結腸切除術において, 有効な鎮痛効果が得られるが, 硬膜外鎮痛法終了とともに追加鎮痛薬の必要性が増すことから, 硬膜外鎮痛法の使用期間について, さらに検討が必要であると考えられる.

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