日本ペインクリニック学会誌
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腹部外科術後疼痛に対する鍼鎮痛の効果
末梢血β-endorphin, ACTH濃度を指標として
石丸 圭荘今井 賢治岩 昌宏吉岡 裕司咲田 雅一
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キーワード: 術後疼痛, 鍼鎮痛
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1999 年 6 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

これまでに腹部外科手術後疼痛に対し鍼鎮痛を試み, 術後の疼痛を軽減させ鎮痛剤の使用回数を有意に減少させうることを報告してきたが, 鍼鎮痛の作用機序についてはいまだ完全には明らかにされていない. そこで, 内因性 opioid peptid の1つであるβ-endorphin および adrenocorticotropic hormone (ACTH) を指標に手術侵襲や術後疼痛に対する鍼鎮痛の効果について検討した. 鍼鎮痛法は, 経穴 (合谷, 足三里) へ術後3時間目より連続3時間の3Hz鍼通を行なった鍼通電群11例, 対象群として通電を行わない非通電群11例を設定した. 末梢血β-endorphin, ACTHは, 術前, 術中と術直後から術後12時間までの3時間ごとに3mlずつ採血し radioimmuno assay (RIA) にて定量した. その結果, β-endorphin, ACTHは術中全症例で有意に上昇した. 術後は非通電群では時間の経過とともに両者とも術前値に復する傾向が認められたが, 鍼通電群では通電によりβ-endorphin が再び有意に上昇した. 一方, 術後疼痛に関しては, 非通電群では11例中10例で鎮痛剤が使用されたが, 鍼通電群では鎮痛剤が使用されたのは, 11例中1例のみであった. 以上のことから鍼通電はβ-endorphin を再上昇させ術後疼痛を軽減に導くこと, また, 全身麻酔下にあっても手術侵襲は中枢に入力され, ストレス誘発鎮痛が賦活されている可能性が示唆された.

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