抄録
慢性痛の病態メカニズムにおいて, 神経系の可塑的変化が長く続く痛みの原因として重要視され, さらに可塑的変化の重要な一面として神経系やそれ以外の組織におけるさまざまな分子の関与, 変化が研究されており, 脊髄や後根神経節での多彩な遺伝子発現の変化が重要な役割をもつことが示唆されている. 一方, 慢性疼痛のなかで癌性終痛と一言で表現される痛みの発生機序としては, 通常の侵害受容性疼痛に加え, 神経因性疼痛が関与し, さらにそれに心因性の影響が加わっている. 本稿ではその病態メカニズムのなかの侵害受容性疼痛と神経因性疼痛に関して, その痛みの発生メカニズムについて, 特に分子学的観点から述べたい.