日本ペインクリニック学会誌
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腹腔神経叢ブロック後に乳び胸を生じた1症例
高橋 浩金丸 哲也藤本 久実子佐藤 重仁
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2001 年 8 巻 2 号 p. 99-102

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抄録

慢性膵炎の上腹部痛に対する腹腔神経叢ブロック実施1カ月後に胸痛と呼吸困難を訴えて, 緊急入院となり乳び胸と判明した症例を経験した. 51歳の男性で, アルコールによる急性膵炎を発端とする慢性膵炎, 膵石症で入退院を繰り返していた. X線透視下腹臥位にて両側の腹腔神経叢ブロックを行い, 左上腹部痛は消失したが, 右上腹部痛が持続するため, 4日後に右側のretrocrural法によるブロックを実施した. 22G, 12cmのブロック針にて穿刺時に白濁液が吸引されたため再穿刺し, 体神経に異常がないことを確認後, 無水エタノール13mlを注入した. ブロック後右上腹部痛も軽快し, 翌日の胸部X線写真で異常を認めず, ブロック7日目に退院した. 退院時, 背部の穿刺部痛と左右肋間痛を軽度訴えていた. 退院後初診時(ブロック後28日), 右肩の痛みと胸痛があったが, 右肋間神経ブロックで軽快した. 立位呼吸音に左右差はなかった. その4日後, 胸痛と呼吸困難のため緊急入院となった. 胸部X線写真で右胸腔に大量の液体貯留を認め, ドレーン挿入にて白濁液が排出され, 乳び胸と判明した. 20日間の内科的保存療法で軽快退院となった. 腹腔神経叢ブロック後は乳び胸が遅発性に起こることもあり, 注意深い経過観察が必要である.

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