精密機械
Print ISSN : 0374-3543
切削機構に関する研究(第1報)
工具-切屑接触長さについて
佐藤 健児尾崎 省太郎
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1959 年 25 巻 289 号 p. 50-56

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抄録

以上の考察から,構成匁先を伴わない流れ形切屑を生ずる金属切削の場合,次のことがいえる.
工具-切屑接触長さlと剪断角φ,すくい角αおよび切込みdによつて幾何学的に決定される限界角θfは,塑性学的に導かれるものとよく一致し,第一近似としては材料によつてほぼ一定な切削条件に独立な値を取る.従つて切削状態を決定せしめる因子の一つとして十分考慮を払う必要がある.
この限界角を用いると,剪断角φは工具-切屑接触長さと切込みとによつて一義的に決定されることになり,工具-切屑接触長さの測定のみによつて,金属切削における力および変形の関係が定められる.すなわち,工具のすくい角および切込みが与えられると,材料はある剪断面にそつて滑り始めるが,同時に工具のすくい面での摩擦の為にこの剪断角は減少してくる.切削温度の定常化に伴い,その切削条件を満足する工具-切屑接触面積は一定となる.従つてこの接触長さに応じた剪断角が定まり切削の進行は定常化して行くことになる.従つてこの限界角θfをパラメータとする新しい切削方程式を求あることが出来,剪断角φと摩擦角βとの関係を導くことができる.
限界角θfは詳細には切削条件によつて変化するが,細部にわたつての論議は今後の問題である.

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