2023 年 22 巻 1 号 p. 29-42
本研究は,ワーク・エンゲイジメントを説明するモデルである仕事の要求度–資源モデル(JD-Rモデル)の動機づけプロセスに着目し,高等学校教員のポジティブ感情経験を測定する尺度を開発することを第1の目的とし,ワーク・エンゲイジメントに影響を与える要因を検討することを第2の目的として行われた。第1の目的のため,高等学校教員10名を対象とした半構造化面接の結果と先行研究から,ポジティブ感情経験尺度の項目を収集した。本調査では239名の高校教員を対象に質問紙調査を実施した。ポジティブ感情経験の因子分析の結果から,生徒成長,教員貢献,職場協働の3因子が得られ,各下位尺度において一定の信頼性と妥当性が確認された。第2の目的のため,ポジティブ感情経験と個人の資源がワーク・エンゲイジメントを介して,教科指導学習の内発的動機づけが高まるというモデルを想定し共分散構造分析を実施した。その結果,許容できるモデルの適合度が示された。最後に,高等学校教員を対象としたメンタルヘルス対策について言及した。