静脈経腸栄養
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特集:輸液フィルターの意義を考える
注射剤の配合変化によるリスクの回避
―注射用セフトリアキソンナトリウムとカルシウム含有製剤の配合変化を例にして―
中井 由佳徳山 絵生吉田 都内田 享弘
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2009 年 24 巻 6 号 p. 1175-1182

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抄録
本特集では、種々の配合変化の中から、FDAからALERTが出されている、注射用セフトリアキソンナトリウム製剤とカルシウム含有製剤との配合変化に着目して、(1)カルシウム濃度、(2)温度、および(3)振とうの度合いが与える影響について、肉眼的・実体顕微鏡下の観察および光遮蔽型自動微粒子測定装置を用いた不溶性微粒子数 (以下、微粒子数と略す) 測定により評価した成果について述べた。
10mg/mLの注射用セフトリアキソン生理食塩溶液10mLに最終のカルシウムイオン濃度が0.5、1、1.5、2、2.5mmol/Lとなるよう2%塩化カルシウム注射液を加え、薬剤が均一になる程度に緩やかに振り混ぜた後、20℃、25℃、30℃の温度条件下に保存した。混合溶液中の微粒子数を光遮蔽型自動微粒子測定装置により計測したところ、微粒子数はカルシウムイオン濃度と経過時間に比例して増加する傾向を認めた。混合直後では、すべてのサンプル中の微粒子数は日本薬局方 (以下、局方と略す) の許容範囲内であったが、混合1時間後では、すべての温度で、カルシウムイオン濃度2mmol/L以上で局方の許容微粒子数を超えた。配合変化に及ぼす温度の影響については温度が高いほど大きい粒子径の不溶性微粒子を実体顕微鏡下確認できた。逆に温度が高いほど微粒子数は少なかった。また、この事実は、沈殿物重量の測定結果と矛盾しなかった。また、振とうを与えることで微粒子数は有意に増加した。体内濃度を想定した1,000μg/mLの注射用セフトリアキソン生理食塩溶液10mLに最終のカルシウムイオン濃度が1.25mmol/Lとなるよう2%塩化カルシウム注射液を加えた溶液中の微粒子数の検討では、微粒子は有意に増加した。
上記結果より、カルシウム濃度だけでなく、保存温度や振とうもセフトリアキソンとカルシウムの沈殿に影響を及ぼした。
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© 2009 日本静脈経腸栄養学会
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