2010 年 25 巻 4 号 p. 945-950
胆道癌術後に生じうる感染性合併症の原因のひとつに,腸内細菌のbacterial translocation (BT)が挙げられる.腸管内での細菌の異常増殖や細菌叢の変化によりBTは発症しやすい.当科ではこの予防を目的として,(1)周術期の外瘻胆汁の返還,(2)周術期のシンバイオティクス投与,(3)術後早期より経腸栄養の開始,を胆道癌手術症例に対する栄養管理対策として,手術症例に施行している.シンバイオティクスには(1)免疫力を増強する効果,(2)炎症反応を軽減する効果,(3)閉塞性黄疸および手術により乱れた腸内環境を改善する効果,が認められる.術前にはシンバイオティクスを食品として内服してもらい,術後は経腸栄養ルートより投与している.上述の栄養管理対策が確立した後の,胆道癌に対する肝切除例の術後感染性合併症発生は減少している.