2012 年 27 巻 5 号 p. 1229-1237
【目的】肝移植患者の術前栄養状態は移植後成績に影響を及ぼすが、術前栄養療法の効果は明らかでない。そこで肝移植術前栄養療法の有用性について検討した。
【対象及び方法】2009年1月から2011年1月までに成人肝移植手術を施行し経時的にデーターを得ることができた60例を、肝不全用経口栄養剤やシンバイオティクス、亜鉛補充などの術前栄養療法を1週間以上施行できた施行群(n=33)と施行できなかった非施行群(n=27)に分け、各種栄養パラメーターや移植後菌血症発症に対する有用性を後ろ向きに検討した。
【結果】術前栄養療法施行群は非施行群に比較し、総リンパ球数、プレアルブミン、CRP、亜鉛の血中濃度が有意に改善し、移植後菌血症発症率が低下した。また栄養療法施行群で亜鉛とアンモニアの変化率について有意な負の相関を認めた。
【結論】肝移植術前栄養療法は術前栄養状態改善に有用であり、アンモニア代謝改善効果や術後菌血症発症抑制効果も示唆された。