抄録
中心静脈栄養施行時に微量元素欠乏症が起こることが報告され、現在、ルーチンに微量元素製剤が投与されている。小児における体内の微量元素動態の特徴として体重あたりの需要量が多いため、欠乏症が生じやすい。従って静脈栄養の開始後、速やかに複合微量元素製剤の投与を開始すべきである。
自施設では少なくとも3か月に1回の血液検査を施行し、血中微量元素のモニタリングを行っている。複合微量元素製剤の投与量は年齢に応じて決定しているが、特に過剰症や欠乏症などの有害事象は起きていない。しかし複合微量元素製剤に含有されない微量元素に関しては欠乏症を来す可能性があり、その代表がセレンである。セレンの投与量においては各個人差があり、必要量と中毒量の幅が比較的狭いため、その投与中には注意深い臨床症状の観察と血漿セレンのモニタリングが重要である。従って中心静脈栄養施行時には、複合微量元素製剤をただ漫然と投与していればいいのではなく、投与量が適切かどうか、病態の把握とともに定期的なモニタリングを行いつつ、複合微量元素製剤に含有されない微量元素の欠乏症も念頭に入れながら診療すべきである。