抄録
種々の癌において周術期に施行される放射線療法や化学療法の有効性が報告されており、原疾患に起因する栄養障害とこれら補助療法による有害事象を考慮し栄養管理を行う必要が生じている。従来の周術期管理の基本的な考え方は主に術後の栄養管理によって手術侵襲に伴う異化亢進による蛋白喪失を軽減し術後の回復を促進することが目的であったが、最近では術前、術中から栄養管理を積極的に行うことで侵襲の低下のみならず長期予後にも影響を及ぼすことが明らかにされている。欧州での大腸がんを対象とした術後早期回復プロトコル (ERAS) においても栄養管理は重要な位置を占めており、栄養投与のみならず腸管機能促進と侵襲軽減や感染症の低下が報告されている。さらに術前の絶食期間を短縮することにより術後早期からの腸管機能回復に役立つという報告がなされてきている。これらを周術期合併療法とうまく組み合わせていくことが必要となる。