静脈経腸栄養
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28 巻, 2 号
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特集
  • 谷口 正哲, 沢井 博純, 小林 勝正, 竹山 廣光
    2013 年 28 巻 2 号 p. 591-595
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    がんの治療に際して栄養療法の併用は不可欠である。手術療法・化学療法・放射線療法においては合併症・副作用を低減し、完遂率・治療効果を高める。手術療法におけるERASとimmunonutritionの有用性は高い。進行がんでは摂食量減少・炎症発現・筋蛋白崩壊による栄養不良が進行し、がん悪液質に至る。栄養指導・BCAA強化・充分な蛋白補給・炎症の抑制 (NSAIDsあるいはEPA投与) ・蛋白分解の抑制 (EPA投与) は悪液質の発現と進行を遅延させる。がん患者については診断時から終末期までの栄養療法の適用が有用であり、必要である。
  • 三木 誓雄, 寺邊 政宏, 森本 雄貴, 樋口 徳宏, 小川 亜希, 白井 由美子, 岡本 京子, 菱田 朝陽, Donald C. McM ...
    2013 年 28 巻 2 号 p. 597-602
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    悪液質は「単なる栄養補給では改善できない、骨格筋喪失を伴う栄養障害」と定義される。悪液質は通常の低栄養とは異なり全身の代謝異常を伴い、治療の継続性、有効性に悪影響を及ぼし、QOLの低下のみならず生存期間の短縮をも、もたらす。これまで悪液質はがん終末期の病態と考えられてきたが、比較的早期の段階から出現し、病期に依存しない予後不良因子であることがわかってきた。20世紀半ばより悪液質に対する強制的経腸あるいは経静脈栄養が試みられてきたが、有効性を示すエビデンスは得られなかった。近年全身性炎症を制御する目的でEPAが悪液質の治療に用いられるようになった。しかしながらQOLを向上させるエビデンスは示されているものの生存期間の延長に関しては一定の見解は得られておらず、今後治療開始時からの免疫栄養療法の早期導入や分子標的治療を初めとする抗腫瘍療法との組み合わせなどが期待されている。
  • 伊藤 彰博, 東口 高志, 森 直治, 大原 寛之, 二村 昭彦, 都築 則正, 中川 理子, 上葛 義浩
    2013 年 28 巻 2 号 p. 603-608
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    緩和医療を必要とするがん再発症例や終末期患者が陥る栄養障害は、単なる飢餓状態だけではなく、栄養管理や治療に抵抗し、がんの進行に伴う著しい筋肉減少と体重減少を主徴とする代謝異常、すなわち悪液質 (cachexia) が深く関与している。悪液質の定義や病態は未だ明確にされていないが、2010年にEuropean Palliative Care Research Collaborative (EPCRC) において、pre-cachexia→ cachexia → refractory cachexia の3段階に細分化されたものが一般的である。その中で最終段階であるrefractory cachexia (不可逆的悪液質) は、もはや栄養投与に反応しない段階と定義され、本講座の研究ではこの時期にはエネルギー消費量が逆に低下することが知られている。このように、再発、終末期がん患者に対しては、栄養障害の要因を十分に把握し、その時々に応じた適切な栄養管理を実施することが、QOLの維持、向上に直結するため、緩和ケアNSTの活動が極めて重要であると考えられる。
  • 中野 徹, 宮田 剛
    2013 年 28 巻 2 号 p. 609-614
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    種々の癌において周術期に施行される放射線療法や化学療法の有効性が報告されており、原疾患に起因する栄養障害とこれら補助療法による有害事象を考慮し栄養管理を行う必要が生じている。従来の周術期管理の基本的な考え方は主に術後の栄養管理によって手術侵襲に伴う異化亢進による蛋白喪失を軽減し術後の回復を促進することが目的であったが、最近では術前、術中から栄養管理を積極的に行うことで侵襲の低下のみならず長期予後にも影響を及ぼすことが明らかにされている。欧州での大腸がんを対象とした術後早期回復プロトコル (ERAS) においても栄養管理は重要な位置を占めており、栄養投与のみならず腸管機能促進と侵襲軽減や感染症の低下が報告されている。さらに術前の絶食期間を短縮することにより術後早期からの腸管機能回復に役立つという報告がなされてきている。これらを周術期合併療法とうまく組み合わせていくことが必要となる。
  • 千貫 祐子, 高橋 仁, 森田 栄伸
    2013 年 28 巻 2 号 p. 615-618
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    セツキシマブはEGFRを標的とするヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体で、本邦では大腸癌の治療薬として用いられている。近年、米国において、セツキシマブによるアナフィラキシーの原因がgalactose-α-1, 3-galactose (以下、α-galと略) に対する抗糖鎖抗体であることが報告され、これらの糖鎖がウシやブタやヒツジなどの哺乳類に豊富に存在するため、これらを摂取した時にもアナフィラキシーを生じることが報告された。筆者らの施設で経験した牛肉アレルギー患者についてセツキシマブ特異的IgEを測定したところ、いずれも高値を示し、牛肉特異的IgE値と相関関係が認められた。このことから、セツキシマブ投与前に牛肉特異的IgEを測定することによって、α-galが原因となるセツキシマブのアナフィラキシーを未然に防ぐことが出来る可能性がある。
  • 濱 宏仁, 橋田 亨
    2013 年 28 巻 2 号 p. 619-625
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    抗がん剤調製時に設備やクローズドシステムといった器具を導入する対策によって,その従業者曝露が減少することはエビデンスとして報告されている.これらの取り組みは,院内環境を抗がん剤汚染から安全に保持するために大きく参考になる.しかしながら,それは医療従事者が抗がん剤曝露に対して十分な知識を持ち,安全に取り扱うことへの意識改革が徹底されてこそ成立する.定期的な院内の抗がん剤汚染状況のモニタリングの実施等によって,その確認が可能である.院内の抗がん剤汚染は,毎日医療従事者が曝露し続けることに加え,訪れる患者やその家族もまた同様であることを忘れてはならない.汚染が少ないから,対策を導入しているから安全であるということではなく,本来環境中から検出されるはずのない抗がん剤が少量であっても検出されることがないよう努めなければならない.
  • 小林 由佳, 中西 弘和
    2013 年 28 巻 2 号 p. 627-634
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    がん患者に対する積極的な栄養療法は否定的であったが、近年はがん患者への積極的な栄養療法が提案されるようになってきた。しかし、がん患者の多くはがん化学療法や放射線療法などに伴い摂食障害になることも多く、また、がん特有のがん悪液質が原因となることで栄養不良が起こり得るため、早期からの栄養管理を行うことはとても重要である。特に外来化学療法を受ける患者は家庭で日常生活を送り、栄養管理を家族や自身で行いながら治療を受けることになるため、様々な問題を抱えている。そこで、特にがん化学療法の副作用として摂食障害の原因となる悪心・嘔吐、味覚異常、口腔粘膜炎、食欲不振の対策について、定義、発現機序、発現時期、症状、予防対策、栄養療法や食事内容の工夫について述べるが、患者及び患者家族のquality of life (QOL) に大きく影響する摂食障害を画一的に対応することは困難である。実際の臨床現場では患者個別の対応が望まれる。
  • 中山 季昭, 芝﨑 由美子
    2013 年 28 巻 2 号 p. 635-644
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    がん化学療法に使用する抗がん薬の多くは、細胞毒性、発がん性、催奇形性を有するため危険性医薬品に分類される。そのため、抗がん薬を投与する際には、曝露防止や血管外漏出対策といった、栄養療法とは別の観点からの注意や対策が必要となる。しかし、運用による対策には限界があり、それだけでは患者や患者家族、そして医療従事者全ての安全を確保するには不十分である。そこで今回、がん化学療法施行時に使用することで、抗がん薬曝露対策、血管外漏出対策、及び投与時のトラブル対策等の安全性向上に役立つ医療器材について紹介する。医療安全向上のためには、これらの医療器材を使いこなすための情報と技術が必要不可欠である。
原著
  • 佐原 稚基, 中 禎二, 福永 裕充, 原 倫子, 永井 智子, 林 郁絵, 勝丸 千幸, 久守 千恵美, 榊 ひかり
    2013 年 28 巻 2 号 p. 645-651
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者開腹手術において、Controlling Nutritional Status Score (CONUT Score; 以下、CONUTと略) とSurgical Apgar Score (以下、SASと略) の合併症発生リスクに対する有用性について検討した。【対象及び方法】開腹外科手術を行った75歳以上の高齢者112例を対象とした。術後合併症の有無で2群に分け、術前のCONUTと術中測定値からSASを算出し、両群で比較した。【結果】SASの高リスク例の割合は、合併症発生群の方が多かった (p=0.0159) 。また、CONUTが不良であるほど、SASの高リスク例の割合は増加した (p=0.0007) 。CONUT不良例は有意に感染性合併症発生群に多かった (p=0.0145) 。特にCONUT不良で、かつ、SASでの高リスク (Double Positive) は、感染性合併症の発生率が高く、有意な危険因子であった。【結論】CONUTとSASは、術後合併症発生予測における簡便な指標として有用である。
  • 門脇 秀和, 中村 睦美
    2013 年 28 巻 2 号 p. 653-660
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    【はじめに】重症肺炎患者に対し経鼻胃管を用いて実施した早期経腸栄養療法にて、目標栄養量に達するまでにかかった日数 (以下、Refeeding日数と略) と関連する因子を検討した。【対象および方法】Refeeding syndromeのリスクを有すると診断した75歳以上の重症肺炎の連続20例。Refeeding日数と相関を有する臨床所見及び採血項目を抽出した。Refeeding日数を全体平均の7.1日で区切った7日以内群と8日以上群、また、リンの投与群と非投与群の2群の、それぞれの臨床背景を比較した。【結果】Refeeding日数と相関を有したのは肺炎の重症度の指標であるCURB-65、リンおよびChEであった。Refeeding日数を7日で区切った2群では、CURB-65、リンおよびChEのそれぞれに有意差を認めた。リンの投与有無別では、有意差を認めなかったものの、リン投与群でChEが低値の傾向であった (P = 0.062) 。【結論】Refeeding日数は、CURB-65に正の相関を、リンおよびChEに逆の相関を認め、いずれも早期経腸栄養療法における重要なモニタリング項目であると判断した。
  • 山口 哲央, 足立 昌司, 溝上 智英子, 城田 晶子, 米田 昌代, 岩倉 研二, 二階堂 任
    2013 年 28 巻 2 号 p. 661-666
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】ビタミン群の欠乏は認知機能障害の原因となることがある。認知機能障害をともなう低栄養が疑われた患者においてニコチン酸濃度を中心に種々の栄養指標を測定して、解析を行った。【対象と方法】平成21年6月から平成23年8月まで当院を受診した患者55名を対象とした。調査項目は、年齢、性別、身長、体重、BMI、血清総蛋白濃度、血清アルブミン濃度、白血球数、リンパ球数、血清ビタミンB1濃度、血清ビタミンB12濃度、血清ニコチン酸濃度、飲酒歴の有無などであった。【結果】ニコチン酸濃度は、低栄養患者のアルブミン濃度、総蛋白濃度、小野寺の予後栄養指数と相関関係を示したが (p<0.05) 、他のビタミン濃度はそれらと相関関係を示さなかった。【結論】ニコチン酸欠乏はペラグラ脳症で知られる認知症類似の症状をきたすことが知られている。認知機能障害をともなう低栄養患者のなかに、欠乏症が潜在している可能性が示唆された。低栄養患者に対してビタミンを投与する際はニコチン酸の併用が必要と考えられた。
施設近況報告
  • 田嶋 公平, 飯塚 みゆき, 加嶋 美由紀, 山﨑 円, 永井 多枝子, 剣持 る美, 中島 美江, 田中 肇, 内田 信之
    2013 年 28 巻 2 号 p. 667-670
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    【はじめに】口腔ケアは重要であり、歯科を標榜していない当院において地域の歯科医師会の協力のもと、外来患者を対象に歯科受診を積極的に勧めた。また医療・介護従事者等を対象として歯科医師を講師とした口腔ケアセミナーを開催した。【対象及び方法】がん患者を主な対象とし、歯科受診専用の診療情報提供書を作成し歯科受診を勧めた。さらに医科歯科連携を深め、地域完結型医療の実現を目指すため口腔ケアセミナー開催を検討した。【結果】28名が歯科を受診し、スケーリング/ブラッシング指導、義歯の修理/調整、抜歯、カリエス処置をおこなった。第1回吾妻郡口腔ケアセミナーを開催したところ多職種にわたる総勢91名が参加し意欲的に知識や技術の向上を計った。【考察・結語】今後もさらも医科歯科連携を続けていくことで、地域完結型の医療を目指す必要があると考えられた。
臨床経験
  • 陣場 貴之, 森 朋子, 佐々木 佳奈恵, 丸山 弘記, 原田 真理, 相田 由美子, 山田 美樹, 齋藤 恭子, 原 俊輔, 安藤 亮一
    2013 年 28 巻 2 号 p. 671-675
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】腎臓は水電解質など生体内の恒常性を維持する役割があり、栄養療法を行う上でその評価は重要である。そこで、NST介入例における腎機能低下症例について腎機能、電解質を中心に検討した。【対象・方法】腎機能の評価に推算糸球体濾過量 (eGFR) を用い、NST介入患者291例中、eGFR<60mL/min/1.73m2を腎機能低下群 (119例) 、eGFR≧60 mL/min/1.73m2を対照群 (172例) とした。さらに、腎機能低下群を慢性腎臓病 (CKD) ステージを用いてステージ分類し、SGAや転帰と腎機能や電解質異常との関連について検討した。【結果】腎機能低下群はNST介入症例の約4割を占めていた。また、ステージG3-G4ではNST介入時に比べ介入後にeGFRは改善していた (p<0.05) 。転帰別ではNST介入により栄養状態が改善した群でeGFRの改善を認めた (p<0.05) 。電解質異常の発生頻度に有意差はなかったが、腎機能低下群で多い傾向を示した。【考察・結語】NST介入により、腎機能や電解質異常の改善が期待できる症例もある。電解質異常については、症例に応じた対応が必要である。
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