2023 年 58 巻 4 号 p. 654-658
心臓手術は1938年PDA結紮術から始まり,1944年のBTシャント,そして,1953年に人工心肺を用いたASD閉鎖を皮切りに飛躍的な発展をとげてきた.なかでも,1975年にJateneにより発表された大血管スイッチ手術は今日でも完全大血管転位に対する第一選択の術式であり,また,Castanedaによって1983年に発表された,完全大血管転位に対する新生児動脈スイッチ手術の報告は,世界の新生児開心術を切り開く大きなきっかけとなった.新生児心臓手術の成績は向上を続け,特に左心低形成症候群に対する治療成績の向上はめざましく,日本においては1996年に左心低形成症候群に対するNorwood手術の死亡率は60%を超えていたが,現在は約15%程度となっている.両側肺動脈絞扼術や右室肺動脈シャントの導入などによる全体的な成績の向上が寄与していると考えられる.しかし,まだ新生児心臓手術の成績は満足できるとはいえず,今後もさらなる改善が必要だと考える.