2023 年 59 巻 3 号 p. 360-365
目的:青森県における帝王切開後試験分娩(TOLAC)の現状と合併症を検証し,TOLACの適応基準を再検討すること.
方法:青森県内の周産期母子医療センター 5施設のうちTOLACを行っている2施設において単胎を分娩した妊婦を対象としTOLAC希望の有無,最終的な分娩方法,帝王切開後経腟分娩(VBAC)母体の有害事象,児の予後等を明らかにした.さらにVBAC群と帝王切開群で母児の情報を比較した.
結果:対象者441人中159人(36.1%)がTOLACを希望し,TOLAC成功者は87人(TOLAC成功率:92.6%)であった.TOLAC施行者に周産期死亡や子宮破裂等はなく,VBAC群と帝王切開群の比較では,分娩週数,出生時体重はVBAC群の数値が有意に高かった.さらにTOLACが関与していると考えられる新生児死亡や集学的治療を要した児はいなかった.
考察:反復帝王切開例では,前置胎盤や癒着胎盤のみならず,子宮摘出,腸管や膀胱損傷,母体死亡などのリスクも増加することから今回このような検討を行った.今回解析対象としたTOLACを実施している2施設では成功率も高く,今後もこの取り組みを継続する方針である.